日本でも年代ごとに人気歌手や流行りの曲が変わっていくように、フランスでも人気の歌手は毎年変わっていきます。
今回はその中でも、2024年の現在、フランスで最も評判を呼んでいる「2024年人気フランス人歌手3名」をご紹介します。
彼らの楽曲の歌詞を日本語訳した解説もありますので、ぜひ最後までご覧ください。
Angèle(アンジェル)
本名:Angèle Joséphine Aimée Van Laeken
Angèle
引用:https://www.lapresse.ca/arts/musique/2019-06-16/francos-angele-et-le-succes
フランスでは知らない人はいないほど知名度が高い女性シンガーです。2018年にリリースされたデビューアルバム『Brol』は彼女の母国のベルギーで1位、そしてフランスでは3位を獲得し、翌年フランスで開催された「Victoires de la Musique 2019(フランス音楽祭2019年)」で「Album Révélation of the Year(期待アルバム新人賞)」を受賞しました。
2017年にデビューシングル『La Loi de Murphy(マーフィーの法則)』をリリースし、2018年にセカンドシングル『Je veux tes yeux(あなたの目が欲しい)』がリリースされました。両方ともMV(ミュージックビデオ)はYouTubeですぐに数百万再生され、大注目を浴びました。
CM出演にも力を入れており「CHANEL」などのブランド広告にも出ている、フランスのアイドル歌手の象徴のような存在です。
フランスで大変知名度の高いの彼女ですが、実はベルギー人です。
父親はミュージシャン、母親は女優の家庭に育ちました。デビューのきっかけは、Instagramに投稿した自身で作詞作曲して歌っている動画でした。最初のフォロワーは、当時の彼女のベビーシッターだったそうです。
彼女自身が作詞した楽曲『Flou』の中に歌詞として、最初の動機がInstagramの自作の動画だったこと、フォロワーが増え始めて一気に火がつき、それによって周りの反応が急に変わってしまったことなど、フランスのトップ歌手の座に登り上げたことのいきさつを語っています。
楽曲『Flou』より
J’ai commencé par Instagram
C’était cool, j’avais un très bon programme
Petit concert dans des bars vides
Ma baby-sitter la première à m’suivre
Ensuite tout a changé très vite
Même mes amis ils ont changé
Tout est devenu plus simple
Enfin surtout pour rentrer dans les soirées
(日本語訳)
インスタグラムを始めたの
すごく良かった、素敵な計画があったのよ
誰もいないバーで、小さいコンサートもしたのよ
最初のフォロワーは私のベビーシッターだったわ
それからというもの、全てが劇的に変わったわ
私の友達すら変わってしまったのよ
今までよりも、より単純になっちゃったの
特にソワレ(夜のパーティー)に入る時にはね
彼女の歌声は独特で、日本でいう「ささやきボイス」のような感じで聴いていてとても心地良いです。フランスのシャンソンが好きな方もフランス人歌手は知らなかったという方も、ぜひ一度聴いてみてください。
Pomme(ポム)
本名:Claire Pommet
引用:https://lefair.org/project/pomme/
彼女もまた、現在のフランスを代表するトレンド歌手です。特に若い世代、ティーンエイジャーなどに歌詞や曲想が共感できると話題を呼んでいます。
『En cavale』『À aussi』『Saisons』など数々のアルバムをリリースし、2020年のアルバム『Les Failles』がフランス音楽際で年間最優秀賞に選ばれました。また女性演奏歌手部門でも賞を受賞しています。
6歳から音楽理論を学び、7歳でとてもレベルの高い児童青少年合唱団 « La Cigale de Lyon(リヨン合唱団)» に参加しています。リセ(高校)の第2学年(中等教育の第5学年に相当する)の時にCDを自主制作し、独学で動画編集やアフレコなどを学び、YouTubeで公開した途端たちまち人気が急騰しブームになりました。
儚く透明感のある歌声は、老若男女問わず支持されています。
また、彼女は日本と日本文化が大好きで、さらに子供の頃から宮崎駿のアニメの大ファンだったことを公言しています。特に『千と千尋の神隠し』が大好きな彼女は、2021年に『いつも何度でも』をカバーして反響を呼びました。
Pierre Garnier(ピエール・ガルニエ)
本名:Pierre Garnier
引用:https://www.cheriefm.fr/artistes/pierre-garnier/biographie
ノルマンディー地方のカーン出身のフランス人歌手です。彼は『Star Academy(スターアカデミー)』という歌手や女優を選抜するフランスの番組で、2024年に圧倒的な支持率によって優勝しました。
2024年2月にリリースした『Ceux qu’on était(僕たちであったそのもの)』はたちまち大評判となり、わずか翌日までにフランスで売上一位になりました。
このシングルは『Star Academy』のコンテストに出場する数週間前に、彼の友人たちと行ったソワレ(夜のパーティー)で書かれました。数週間の間にこんな良い曲と歌詞が完成するなんて驚きですね。内容は、深い恋愛関係にあったけれど、幸せな結末ではなかったという内容で、冒頭の歌詞から感傷的です。
楽曲『Ceux qu’on était』より
Je sais c’que tu vas dire
Que c’est pas à cause de moi
Mais t’es prête à partir
Et tout est rangé déjà
Y a plus que des affaires à moi
J’vais pas te retenir
Je l’ai déjà fait trop de fois
Et comme dernier souvenir
Je ne veux pas de celui-là
Pas celui où tu t’en vas
J’aimerais garder
Le meilleur de ceux qu’on était
Et je sais qu’ailleurs, t’iras chercher
Un peu de ce que je ne t’ai pas donné
Je vais garder
Le meilleur de ceux qu’on était
Et c’est pas grave si tu vas chercher
Un peu de ce que je ne t’ai pas donné, pas donné
(日本語訳)
君が言おうとしていることは分かっているよ
僕のせいじゃないって言うんだろ
でも君はもう去っていく準備をしているんだね
全てはもう片付けられてしまったんだ
僕の問題以上のものがあるんだ
君を引き止めるつもりはないよ
もう何回もしたからね
最後の思い出のように
そんなものはもう欲しくないんだ
君が去っていくような思い出はね
本当は手放したくないよ
僕たちの中で最高だったものを
僕は君が他の場所にそれを探しに行くってことを知ってるんだ
君にあげられなかったものを少しだけ
持っておくよ
僕たちの中で最高だったものを
ねえ、君が探しに行ったとしても、大丈夫だよ
僕が君に与えてあげられなかったものを、少しだけね
「彼の歌声はとても情緒があり、聞き心地も良く説得力があって、特別に惹かれるものがある」とフランスでは評判の新人歌手です。彼の両親共に音楽家で、工科大学でマーケティング技術を学びながら、独学でギター・ピアノ・ドラムを学びました。幼い頃から自分で作曲し、特にEd SheeranやJustin Bieberなど、アメリカとイギリスのポップスから強いインスピレーションを受けています。
歌詞を理解しながらMVを見ていると、とても感情移入してしまいますね。ぜひ最後まで聞いてみてください。
まとめ
今回はフランスで現在トレンドの歌手3名をご紹介しました。
彼らの人気に共通する要素として、特に感情の揺れ動く世代である思春期や若者の心の中をよく表している、と共感を呼んでいるということが挙げられます。
メロディーや聴きやすさはもちろん、日本と同じように歌詞に共感できたり感情移入できることが人気の理由であることがよく分かりますね。今回ご紹介した歌手はもちろん、ぜひ他のフランス人歌手の曲も様々なジャンルで聞いてみてください。フランス語の勉強にも役立つと思います。