以前の記事で、フランス語にはたくさんの独特な表現があるとお伝えしました。
今回は、フランスの日常生活でよく使われる「くじけそうな人を励ますときに使う表現6選」をご紹介します。
どの表現も私の10年間のフランス生活の中でとても頻繁に耳にしてきました。どれもメジャーで日常的に使われている自然なフレーズなので、ぜひ習得してみてくださいね。
①Tiens bon
頑張って!
Tiens=Tenir(=英語のto hold)の命令形です。「…を掴んでいる、繋ぎ止めている、持っている、固定している」という動詞です。命令形なので「…を掴め、繋ぎ止めて、持って」という意味になります。Bon=良く。直訳すると、「良く繋ぎ止めて!」という意味ですが、障害や困難があり、諦めてそれ(目標)を手放してしまいそうな人に向かって励ます時に使われる言葉です。
Tenirは「(ある状態に)保つ、維持しておく」という意味が強いですが、「しがみついておく、手に引き留めておく、捕まえておく」という意味もあるので、「その状態を保持しておいて!頑張ってしっかりしがみついておいてよ!」というイメージです。
フランス人が「Tiens bon !」と言った場合、その意味は「頑張って!」という力強い励ましの言葉として使われます。口語的な表現で「(はがれそうな勇気を)引き留めておいて、屈しない、諦めないで」という考えが含まれます。
たとえば、病気の友人と一緒にいて医者に連れて行く途中、車の中で彼の気分が優れないのを見たときに彼に言います。
「On arrive presque, tiens bon ! (もうすぐ到着するよ、頑張れ!)」
②Tu peux le faire
君ならできるよ!
Tu=君(二人称)、peux=pouvoir(動詞:できる)の二人称活用形、le=それを、faire(=英語のdo:する)という意味です。「君なら(それを成し遂げることが)できるよ」という文字通りの意味ですが、フランスでは日常的かつとても頻繁に使えれるフレーズです。
自信を無くしている人や、自分の能力を疑っている人を励ますときに使います。たとえば友人が、明日大事なプレゼンがあり、緊張して上手く出来るかどうかを疑ってすっかり弱気になってしまっているとき、「大丈夫、君ならできるよ!頑張って!」といった励ましの言葉として用いられます。
また、レッスンの最中などに何回やっても上手くいかなくて、失敗してくじけてしまいそうな生徒を目の前にした先生がよく使う表現でもあります。たとえば楽器の練習中、何度も先生に言われたところを演奏しても上手く弾けなくてくじけそうになっている生徒に、先生が「Tu peux le faire ! (大丈夫、君ならできるよ!)」とよく言います。
①の「Tiens bon」と一緒に組み合わせて用いられることも多いです。
「Tiens bon, je sais que tu peux le faire !(頑張って、私は君はできるって知ってるよ!)」
③Lâche pas または Ne lâche pas
あきらめないで!
lâcher=(英語)to let go of / to drop
lâcherは動詞で「…を放す、放つ、(持っているものを)落とす、…を緩める、解放する」という意味があります。Pas=notなので否定系。直訳すると、「放さないで!」という意味ですが、フランスでは「何かを手放す」=「それを保持するのをやめる=あきらめる」という意味があります。そのため「あきらめないで!」と同じ意味ですが、もう少し親しみのあるイメージで、友人や親しい人を励ますときの言葉としてよく用いられています。
たとえば、大事なコンクールを控えているのにあまり練習ができていなくて、やっぱり出演するのをやめようかどうか迷っている友人に対して、「Tu as fait des efforts jusqu’à présent, ne lâche pas ! (今まで頑張ってきたんだろ!諦めないで頑張れよ!)」のように使います。
④Tu y es presque
もうそこまで来ているよ!(もうほぼゴールだよ!)
Tu es=君は、y=そこまで、presque=ほとんど、ほぼ
相手が努力をしていることを知っており、もうほとんど目標に近づいていてあとちょっとで達成できる、だから諦めてはいけないんだ!ということを強く伝える励ましの表現です。
フランスでは頭の中でイメージして伝えることが多いと以前もお伝えしましたが、まさにこれがそうです。
もうゴールが見えているんだから、ここで諦めてはいけないんだ、あとちょっとだ!君はもうほとんどゴールに達しているんだよ、もうほとんどゴールだよ!と相手に勇気を再び与えて士気を上げ、元気付ける意味合いで日常的に用いられます。
⑤Je crois en toi
君のこと信じてるよ
私的に、一番フランスらしくて美しい表現だなと思う励ましの表現です。
この表現では「僕は君(の能力)を信じているよ=だから自信を持って、頑張って」という意味合いがあります。
たとえば、新しい事業やビジネスを始めようとしている人が、自分の能力に疑問を持っていたり、本当にうまくいくだろうか、やり遂げられるだろうか、と後ろ向きになっているときや、躊躇してしまっている場合に「Je crois en toi(僕は君を信じているよ=君ならそれができるよ、頑張って)」という意味合いで用いられます。とても前向きで、その人をサポートする時によく用いられるフレーズです。
こちらは親しい友人や恋人、また上司が部下に対して用いられるかなりフランクな表現となりますので、上司や目上の人に対して使うと大変失礼になりますので注意が必要です。
⑥Continue comme ça
この調子で続けてね!
continuer=「…を続ける、継続する、続行する」という動詞です。comme ça=「そのまま、そんな風に」
こちらのフレーズも、フランスで耳にする機会がたくさんありました。日常的にかなりの頻度で使われている励ましのフレーズです。相手が既にたくさん努力して多くの進歩を遂げており、その努力を評価して、「そのまま進んでいってほしい、その調子でこれからも努力を続けてね」と相手を後押しする必要がある時に用いられます。
たとえば、子供の通信簿に「Continue comme ça」と書かれていた時、それを見ながら先生は生徒にこのように言います。「Je vois que tu fais des efforts, il faut continuer !(君がとても努力しているのは分かるよ、この調子で頑張ろうね!)」
まとめ
日本語にも人を励ますときの表現がたくさんあるように、フランス語にも本当に様々な励ましのフレーズがあり大変興味深いですね。
中でも、くじけそうな人に対して「(そのまましっかり)繋ぎ止めておいて!(その状態を)維持しておいて」など、頭の中でイメージしやすく、なんともフランスらしい表現方法もありました。各国で励ます時の表現方法はそれぞれ違うように、フランス語でも日本語とは少し違った方法で励ましの表現が使われることが分かりましたね。
フランス語にはこのように日本語にはない表現がたくさんあります。今後もこのような面白くて視野が広がる表現を含め、たくさんの情報を発信していきます。