皆さんは『Hélène et les garçons 』というフランスのドラマシリーズをご存知でしょうか?
1992年にフランスで放送されたドラマで、Jean-Luc Azoulay(ペンネーム:Jean-François Porry)という脚本家によって制作され、ABプロダクションという制作会社が配信していた、全エピソードが30分以内、280エピソードから成るフランスの超人気ドラマ(ホームコメディ)です。
内容は日本でもあるような親しみやすいテーマで、フランスの大学生の恋愛ドラマです。舞台も大学の学食や大学寮などで、ほのぼのとした和やかな雰囲気で安心して観ることができます。
1992年から1994年まで配信され、当時フランスでは爆発的人気で若者なら誰しもが知っていると言っても過言ではないほど(フランス版『Friends』のように大人気でした)、かなりフランス色の強いドラマシリーズです。また、この年代でなくても現在でも大変人気で、(両親から聞いたなど)若い層でも名前が知られているほど、フランスでは非常に知名度の高い作品です。
今回は、そんなフランスで大変有名なドラマ『 Hélène et les garçons 』の第一話から、言い回しや表現について解説していきます。どの表現もとてもフランスらしく、興味深いフレーズや単語がたくさん出てきますので、ぜひ実際に俳優さんの表情や口の動きなどと合わせてご覧ください。
Ah, pourquoi tu gâches tout, tout le temps ?(ねえ、なんで君はいつも全部台無しにするんだよ?)
《2:14》
Vous voyez bien qu’elle attend quelqu’un.
(よく見てみなよ、彼女は誰かを待っているって分かるだろ)。
Ah, pourquoi tu gâches tout, tout le temps ?
(ねえ、なんで君はいつも全部台無しにするんだよ?)
学食で初めてCathy(黒髪の女性)を見た3人の大学生(Nicolas, Étienne, Christian)は彼女の美貌にナンパしようと試みます。しかし、彼女が既に2つの椅子で誰かを待っている様子を見て、Nicolasが誰かを待っているんだよと悟るシーンです。
Vous voyez bien…=~ということがよく分かるでしょう
quelqu’un=誰か
gâcher=(楽しみなど)を台無しにする、ふいにする/(金・才能など)を粗末にする、無駄にする/(機会)を逃す
Plutôt sympas, y en a même un qu’est mignon !(すごくいい感じ!その中で一人、可愛いのもいるしね)
《7:34》
Comment tu les trouves, toi ?
(彼らのことどう思う?)
Plutôt sympas, y en a même un qu’est mignon !
(すごくいい感じ!その中で一人、可愛いのもいるしね)
CathyとHélène、女子2人が初めて会った男性3人のことについて語ります。
sympa(s)=「いい感じ、素敵、感じのいい」という形容詞です。フランスで日常的に大変よく使われる単語です。人についても使いますし、レストランや建物、雰囲気などが良い感じの時にも頻繁に使われます。「彼ら」なので、複数形の「sympa(s)」になります。
Ah bon, lequel tu préfères ? Étienne ?(あら、そうなの?誰が好きなの?エティエンヌ?)
《7:39》
Ah bon, lequel tu préfères ? Étienne ?
(あら、そうなの?誰が好きなの?エティエンヌ?)
Non Nicolas. J’adore ses yeux !
(ううん、ニコラよ。彼の目が大好きなの!)
Lequel=どの、どれ
tu préfères=動詞「préférer」の二人称単数形(tu=君)です。フランス語の動詞は、主語によって語尾が変わります。意味は「~をより好む、~の方を選ぶ、~が好き、気に入っている」という意味です。
J’adore…=~が大好き。”adorer”は英語の “to love”で「~が大好きである、~を熱愛する、~には目がない」という他動詞です。人や物など、どんな時でも使うことができます。こちらもフランスで日常的に大変よく使われる表現です。
On n’aura pas à se disputer. (私たちは言い争うをしないで済みそうね。)
《7:45》
On n’aura pas à se disputer. Il est même très mignon.
(私たちは言い争いをしないで済みそうね。私は彼がすごく可愛いと思うな。)
Qui ?
(誰?)
Étienne
(エティエンヌよ)
se disputer=「口論する、言い争いをする」という動詞です。
C’est terrible ! Mais c’est terrible !(本当にひどいのよ!もう、我慢ならないわ!)
《8:07》
Oh, mais les filles, mais c’est terrible ! Mais c’est terrible !
(ねえ、ちょっと聞いてよ、本当にひどいのよ!もう、我慢ならないわ!)
Mais Johanna, mais qu’est-ce qui se passe ?
(ちょっとジョアンナ、何があったの?)
ジョアンナが、元彼のジャン・クリストフからぞんざいに扱われたことを、クラスメートの2人(CatheとHélène)に話しているシーンです。
c’est terrible=「terrible」は「恐ろしい、怖い、恐怖の、ものすごい、すさまじい、ひどい」という形容詞です。物に対しても用いられますが、人・性格などが「手に追えない、我慢のならない」と言う場合にも用いられます。
qu’est-ce qui se passe ? =「どうしたの、何があったの?」と尋ねる場合に最もよく使われる、決まった定型表現です。
C’est grave ?(重大なの?)
《8:12》
C’est grave ?
(重大なの?)
C’est Jean-Christophe.
(ジャン・クリストフよ。)
C’est grave ?=大変なの? 「grave=重大な、大変な」という形容詞です。「大丈夫なの、深刻なの?」相手のことを気遣い、心配する場面で現在でもフランスで日常的によく使われる定型表現です。
ちなみに「大丈夫だよ、たいしたことないよ」と言いたい時には”C’est pas grave” と答えます。
Ah bon, j’ai eu peur.(ああ、なんだ、びっくりした。)
《8:14》
Ah bon, j’ai eu peur.
(ああ、なんだ、びっくりした。)
Comment ça, t’as eu peur ? Je vous annonce que ma vie est brisée et tout ce que vous trouvez à dire c’est « J’ai eu peur ».
(どういうこと、びっくりしたって?私の人生は打ち砕かれたって言っているのに、あなたは「びっくりした」としか言えないの(それが全てのあなたが言えることなの)?
“peur” は「恐怖、おびえ、心配、不安、懸念」という女性名詞です。”J’ai peur” で「怖い」と言う定型表現になります。「びっくりした(怖かった)」と過去形なので、”J’ai eu peur” となります。
Comment ça ? =「どういうこと?」相手が言ったことに対して納得できない場合に聞き返す、最もよく使われる表現です。
“annoncer” は「(人に)…を知らせる、告知する」という動詞です。”Je vous annonce” なので、一人称(Je=私)が、(vous=あなたたち)に知らせる、となります。
On commence à avoir l’habitude.(私たちはもう慣れ始めたのよ)
《8:24》
Johanna, tous les deux jours, c’est la même histoire avec Jean-Christophe, alors tu comprends, on commence à avoir l’habitude.
(ジョアンナ、あなたは決まって2日ごとにいつもジャン・クリストフの話をするでしょ、私たちはもう慣れ始めてるって分かるでしょ。)
commencer à…=「~を始める」という動詞です。
avoir l’habitude=「~する習慣がある、~に慣れている」という定型句です。
ジョアンナが2日ごとに決まって元彼の話をするので、女子2人はもうその話に慣れ始めて飽き飽きなのよ、というシーンです。
Tout le monde s’en fiche (皆どうでもいいんだわ)
《8:30》
C’est ça ! Je souffre et tout le monde s’en fiche !
(そうよね!私が苦しんでいるのに、皆どうでもいいんだわ!)
Bon, qu’est-ce qu’il t’a encore fait ?
(もう、彼は今度はあなたに何をしたの?)
Non, mais c’est un monstre ! C’est un monstre !
(いや、もう、あれはモンスターよ!)
Raconte-nous.
(私たちに語ってちょうだいよ。)
tout le monde s’en fiche=みんながどうでもいいと思っている。”se ficher” は「~を無視する、問題にしない」という使役同士になります。「Je m’en fiche」で「(私は)そんなことはどうだっていい、知ったことか、構うものか、お好きなように」と言う意味になります。この場合は「tout le monde(皆)」が主語なので、「皆どうでもいいんだわ!」となります。
qu’est-ce qu’il t’a encore fait=qu’est-ce que…(何が、何を)
encore=また、今度は
Raconte-nous=”raconter” はフランス語で「語る、話す」。こちらも現在でもとても日常的に使われる動詞です。”parler” も「話す」と言う動詞ですが、”raconter” の方が「(詳しく)語る、詳細を説明する」というニュアンスがあります。
Ma vie privée concerne que moi.(私の私生活はプライベートなの、私だけに関与することなのよ。)
《8:43》
Ah non, ma vie privée concerne que moi.
(ううん、私の私生活はプライベートなの、私だけに関与することなのよ。)
Bon, d’accord, t’as raison, excuse-nous !
(あらそう、分かったわ。そうよね、ごめんなさいね。)
Attends, attends comment ça, « j’ai raison » ? Vous insistez pas ?
(ちょっと待ってよ、どういうこと、「そうよね」って?食い下がらないの?)
ma vie=私の人生(生活)
privée=私的な、個人的な、プライバシーの
ma vie privée=「私生活、プライベートな」という意味になります。
concerne que…=~だけにしか関与しない
t’as raison=”Tu as raison” の略語。フランス語では話し言葉の際に、よくこのように少し省略して話すことがとても多いです。「そうだよね、その通りだね、あなたは正しいね(このシーンでは皮肉で)」の意味です。
Vous insistez pas ?=”insister” は「食い下がる、執拗に言う、言い張る」という動詞です。一回断られたけど、それでも諦めずにしつこく執拗に言い張る、といったニュアンスです。
Cet odieux personnage m’a fait subir(このおぞましい人物が私に被害を与えたのよ)
《8:57》
Bah non, tu veux pas nous le dire.
(ううん、だってあなたは私たちに話したくないんだもの。)
Et si je vous le dis pas, je le dis à qui ? Ben, je vais le raconter à qui qu’est-ce que cet… Oh mais…cet odieux personnage m’a fait subir.
(じゃあ、もし私があなたたちにそれを話さなかったら、誰に言うのよ?ねえ、その話をいったい誰にしろって言うのよ…このおぞましい人物が、私に被害を与えたことを)
odieux=憎むべき、おぞましい(形容詞)
personnage=人物、やつ(少々軽蔑的なニュアンスがあります)
subir=「(被害・影響などを)被る」と言う動詞です。
“personnage” は男性名詞なので、その前につく不定詞は”ce” になりますが、その前に”odieux” という “o(母音)” から始まる形容詞がきているので”ce=cet” になり” cet odieux personnage” になります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。お気づきのように、ところどころに笑い声が入っているので、とてもほのぼのとした学園ホームドラマということがよく分かりますね。また、当時のフランスの雰囲気やファッション(服装、髪型など)をとてもよく表しています。日本でも90年代と現代とでは大きな違いあるように、30年ほど前はフランスでもこのような感じだったのかと発見できる興味深い要素でもありますね。
またこのように動画と字幕をセットで見ることで、俳優さんたちの表情と口の動き、ジェスチャーなどと一緒に見ることができるのでとても記憶に残りやすく、フランス語を勉強する方法としてはとても良い方法です。
今後もこのようなフランス色の強い、フランスらしい興味深いドラマシリーズや映画をたくさんご紹介していきます。