どこの国でも、その国やその地方の人々の間で普通に行われる物事のやり方があるように、社会的なしきたりや習わしはフランスでも日本でも存在します。
今回は、10年フランスで暮らしている私が、フランス人と日本人との習慣や文化の違いについてご紹介していきます。
きっとイメージしていたのと違っていたことや新たな発見があるかと思います。フランス人ならではの意外な習慣もありますので、ぜひご覧ください。
人前で鼻をすするのは失礼
日本だと風邪を引いた時や寒い時、ついずずっと鼻をすする癖がある人は多いですし別にマナー違反でも何でもなく、通常の日常風景ですよね。
しかしフランスでは、人前で鼻をすするのは失礼(マナー違反、行儀が悪い)とされています。
理由はいたってシンプルで、フランスでは「人前で音を出し続けることはマナー違反」とされているのです。
鼻をかむと一瞬で終わりますが、すするとすすり続けることで音が継続してしまいますよね。そのため「すするぐらいならかみなさいよ!」と内心思ってしまうんだそうです。
また2つ目の理由として(フランス人の友人から聞いた話ですが)、フランス語を話す人の頭の中は日本人と違っていて、ほとんどが「イメージして」話す言語だと言われています。そのため鼻をすするというこの行為も「すすったものが内部に引き込まれて…」と否が応でもイメージしてしまうのだそう。日本人はそこまでイメージする人はいないと思いますが、フランス人の前では御法度なのです。
フランスに行った時に鼻の調子が悪くなった時には、ぜひ鼻をすすらずに「かんで」いただくことをおすすめします。
フランスではスーパーやお店に入った時に、お客さんの方から挨拶をするのが礼儀
日本だと普通のスーパーやコンビニに入った時に、自ら進んで店員さんに「こんにちは」と挨拶する人はそれほど多くないと思います(もちろん中にはいらっしゃいます)。むしろ「お客様は神様」な日本、店員さんの方が「こんにちは」、「いらっしゃいませ!」と元気に挨拶するのが一般的ですよね。
ですがフランスでは、まずお店に一歩入ったらお客さんの方から「Bonjour(こんにちは)」と言わなければ、とても変な雰囲気になり、場合によってはお客さんとみなしてくれません。それどころか、不審な目で見られることも。
フランスではどこへ行っても、まず最初に挨拶は当たり前。たとえスーパーでも「Bonjour」と店員さんに言うことによって、「私(客)が来ましたよ」と店員さんに知らせる行為でもあるのです。そのため特に小さい専門店など、誰かが入っていくと目立つようなお店に何も言わずに入っていくとあまり良い印象を与えませんので、必ず挨拶は必須なんです。
もちろん日本でも挨拶は大事、と子供の頃から教えられますが、スーパーなどで知らない店員さんに自分から挨拶をするのはちょっと勇気がいると言う人も多いのでは。
また、お店を出ていく時には、買うものがあってもなくても「Merci」と言うのが礼儀です。これは「商品を見せてくださってありがとうね」と言う意味も含まれているのです。
フランスに行く機会があれば、ぜひ勇気を出してどのお店に入っても、自分から店員さんに「Bonjour !」と挨拶してみてください。きっと良い反応が返ってきますよ。
ラーメンなどの麺類をすすることはマナー違反
日本だとラーメンなどの麺類は通常ずずっとすすりながら食べるのが一般的でむしろ美味しそうな食べ方ですよね。
しかしフランスでは、音を立てて麺類を食べるのは行儀が悪くマナー違反だとされているんです。実はフランスだけではなく、ヨーロッパ全土でマナー違反とされており、アメリカでは失礼な行為として、最悪お店から追い出されることもあるそうです。
理由は上記の「鼻をすする」の習慣に似ていますが、人前で音を出して食べることは大変行儀が悪いこととされており、豪快に音を出しながら食べるのはフランスでは品がないという認識があります。
また、そもそもフランス人は麺などをすすることが苦手でできない人も多いです。テレビなどで見たことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、ヨーロッパ人は基本的に私たちアジア人のように麺をすすることができません。
私たちは小さい頃から、ラーメンや春雨、うどんなど、慣れ親しんできた麺類がたくさんありますが、ヨーロッパ人は基本主食はパンなので、私たちほど麺類に慣れていないというのが理由の一つです。ただ日本でもスープを飲む時には音を立てて食べるのはあまり行儀が良くないとされているので、その点は類似していますが、麺類をすする音がマナー違反とは意外ですよね。
もしフランスでラーメンを食べる機会があった時には、周りの人に麵をすする音が聞こえないように食べてくださいね。
人から褒められたら「ありがとう」が礼儀正しいとされている
例えば日本で、「髪型変えたんですね、すごくよくお似合いですよ!」と褒められたら、あなたなら何と返しますか?
たいていの日本人は謙遜して、「そんなことないですよ」と言ってしまうのではないでしょうか。
実はフランスでは、これは大変無礼な礼儀がなっていない返し方とされています。フランス流の礼儀にかなった返し方は、素直に「ありがとう」。
意外かもしれませんが、実は褒められた時に「ありがとう」と素直に返すことが、実はとっても礼儀正しいマナーとされているのです。
日本だとどうしてもそんなことない、と謙遜してしまいがちです。これは私たち日本人が、小さい頃から人を尊重し、そして自分を低く置くことによって相手に不快感を与えず、謙虚でいることが美しいこととされてきたからです。ですが、フランスなど特に海外では、褒められたら「ありがとう」と相手の言ったことをひとまず受け入れてから、必要な場合には「でもね、そんなことないのよ」などと謙遜する、というのが一般的です。
上記の場合もそうですが、日本人はフランス人の目から見たら「謙遜過ぎる」と思われることが多々あるそうです。これは私がフランスにいた際に、日本に行ったことがあるフランス人がよく口にしていたことですが「日本人は、何かにつけて謝り過ぎ」という印象が強いらしいです。
日本人はたとえ自分が悪くなくても謝ってしまう人が多く、また日本語の「すいません」は、例えば人混みを通る時や、何かをしてもらったお礼に対しても言いますよね。ただ、これがフランス人には理解不能のようで、「悪くないのになぜ謝るの?」という印象が強かったらしいのです(もちろんお礼の一種でもあるため、この辺りは日本語への理解が必要ですが)。
そのため場合によっては、フランス人にとっては「慇懃無礼(非常に丁寧で礼儀正しいが、度が過ぎると嫌みになり、かえって礼を失することになるということ。 また、うわべは丁寧で礼儀正しいが、実は尊大であること)」のように見えてしまうようです。
褒められてありがとうなんて傲慢だ、と思う人もいるかもしれませんが、実はとっても素直なことなんです。嬉しい時には笑顔でありがとう、悲しい時には涙を流して思いきり泣く。こんな子供のような素直さが、フランスでは受け入れてもらいやすく、また礼儀正しいことであるともされているのです。
ぜひフランスで褒められることがあったら、とびきりの笑顔で「Merci !」と言ってみてくださいね。きっと相手も嬉しく思ってくれるはずですよ。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
それぞれの国で、社会生活や日常生活に関しての様式があり、国によってマナー、礼儀作法なども違っている。当たり前のことなのですが、やはりとても興味深いですね。
褒められた時の「ありがとう」もそうですが、海外、特にフランスでは、とても感情表現が豊かだと感じることが多くあります。嬉しくてつい道端で踊り出してしまったり、悲しくて人目を気にせず大泣きしてしまったり。日本だと人目が気になって、感情をあまり表に出すことは多くないですが、海外では日常茶飯事で、たとえ嬉しくて踊り出してしまったとしても、誰も恥ずかしいなんて思いません。むしろ「ねえ、あなた、楽しそうね!何か良いことあったの?」などと聞いてくる人もいるほどです。
悲しくて泣いていたら、見知らぬ人が自分のことのように心配してくれる。嬉しくて笑顔で歩いていたら、見知らぬ人が「良い笑顔だね!何か良いことあったの?」なんて嬉しそうに話しかけてきてくれる。私はフランスにいる間、そんな経験が幾度もありました。
フランスは日本と比べて、とても「感情」を大事にする国だなと常日頃から感じていました。日本人は、感情を表に出さなさ過ぎるところがあり、それは時と場合によっては良いことでもありますが(自分中心ではなく、相手を尊重できる)、逆に時と場合によってはそれがとても辛く感じてしまう人もいるはずです。
そんな時には、ぜひ一度フランスにいらっしゃることを強くお勧めします。感情を思いきり出せる国なので、今まで見えなかったものが見えてきたりするはずです。
また上記のように日本では当たり前とされてきたことがマナー違反だったり、習慣の違いや文化の違いなども多々あり、物事を色んな角度から見ることができるようになるはずです。新たな発見があったり、視野も広がります。
ぜひマナー・文化の違いを覚えておきつつ、フランス語も少しずつ習得してフランスをもっと好きになってくださいね。
今後も興味深いフランスと日本の違いなどをご紹介していきます。