フランスで大人気のドラマシリーズ『Le jour où tout a basculé』をご紹介(役立つフランス語フレーズの解説付き)

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みなさんはフランスで大人気のドラマシリーズ『Le jour où tout a basculé』を知っていますでしょうか?

以前のブログ記事ではおすすめのフランス短編映画(Court-métrage)をご紹介しました。

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今回は、パリ在住10年の私がおすすめする、フランスで大人気のドラマ(シリーズ)をご紹介します。
※フランスではドラマとは言わずシリーズ(série)ということが多いのですが、意味は同じです。

また、後半ではYoutubeに公開されている実際のエピソードを1つご紹介して、ドラマのセリフ中に使われている役立つフランス語表現をいくつかご紹介します。フランス語学習者の方は生きたフランス語を学習することもできますので、ぜひ最後までご一読ください。

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目次

『Le jour où tout a basculé』とは?

『Le jour où tout a basculé』はフランスの若者からご年配の方まで幅広い世代の方に愛されている大人気のドラマシリーズで、実際の出来事に基づいた25分一話完結のミニドラマです。
タイトルを直訳すると「全てがひっくり返った日」。

Le jour=日
basculé=basculer(ひっくり返る、倒れる、落ちる)の過去形。

実話から着想を得て作られているからか、役者さんたちの演技もとても迫力があり、惹きつけられます。
一話完結のミニドラマなので、あらすじや登場人物なども毎回全て変わります。共通するのは、フランスのどこかで暮らしているどなたかの身に実際に起きた出来事なのでリアリティがあり、そう考えるとより興味深く見ることができると思います。

各エピソードのテーマは様々です。
20歳も年下の息子の友達を本気で愛してしまった、上司によるセクハラ、夫からのDV、子供の非行、予期しない妊娠、軽犯罪など。夫からのDV、友人の彼を本気で愛してしまった、不倫関係から抜け出せないなどの普通に誰にでも起こりうる話から、知らないうちに娘が売春をしていたとか、彼女が内緒でアダルトビデオに出演しておりその客が自分の父親だったなど、信じられないテーマも出てきたりします。役者さんたちによる熱い思いの伝わる力の入った演技により、どの場面を見ても迫力があり、観ている私たちも感情移入してしまいます。

毎回最初にその回の話のあらすじを、女性弁護士ナタリー・フェロー(Nathalie Fellonneau)が「今日はこんな話です」と紹介をして始まります。多くのエピソードは誰にでも起きうる話で、ドラマの最後には「もしこのようなことが起こった場合にはこうすれば良いですよ」と、法的なアドバイスなどもしてくれるので実生活でも役立つ知識も付きます。

フランスの一般家庭で、普通に見られているこのドラマシリーズ。ぜひフランスのドラマは日本のドラマと比べて、どんな内容で、どんな役者さんがどのような演技をしているのか、比べてみるのも面白いと思います。もちろん一話一話の内容が濃くて、観客を惹きつける力があり、全く飽きさせません。

今回はその中からの一話、「Ma fille a perdu la raison (娘は正気を失ってしまった)」のあらすじをご紹介すると共に、ドラマの中で使われている面白いフレーズや役立ちそうなフランス語をご紹介します。

エピソード『Ma fille a perdu la raison(娘は正気を失ってしまった)』

あらすじ(ネタバレあり):

思春期の娘Judithは、3年前に父を亡くしたショックから未だに立ち直れずにいる。母は夜勤で病院に勤めている看護師。思春期の娘らしく多感な時期で、病院勤務で忙しい母からもあまり構ってもらえないことに日々孤独を感じていた。学校もサボりがちで、唯一の親友であるMélodieから心配され、授業のノートのコピーを取せてもらいながらなんとかしのいでいた。「どこにも居場所がない」、思春期らしく、センシティブで周り(学校、親)から理解されないと常に苛立ちと孤独を感じ、孤立していたJudith。

ある日、全てに嫌気がさした彼女は誰にも知られず姿を消します。心配した母と親友のMélodieは必死になって探し回り、やっとのことで翌日Judithを見つけます。一晩中彷徨い続けていたJudith。彼女の精神状態を心配した母は、精神科に連れて行くことを決意します(フランスでは、精神科に行くことは決して珍しいことではありません。日本のように白い目で見られることもなく、健康・健常な人も訪れる所で、日本のように特別な人だけが行くという認識はありません)。

しかし望んでもいない精神科に嫌々連れて行かれたJudithは、ますます感情がヒートアップします。精神科の先生にされてもいなのにセクハラされたと嘘をつき、母は逆上し警察を呼ぶことに。しかし、それらは全て後に先生がホモセクシュアル(同性愛者)であることをきっかけに、彼女がついた嘘だとバレることになります。ありもしない嘘をついてまで、なぜ全てを破壊しようとするのか?それには全て、最愛の父を亡くた辛い過去が関係していました。病気で父を亡くしてから常に孤独を感じていた彼女。居場所がない、全てをめちゃくちゃにしてしまいたい。思春期にありがちな感情が、ついに爆発してしまいます。なぜそんな嘘をついたのか、母と先生から問いただされた時に「手伝うって、何を?!パパに会うことを?じゃあ、死ぬわよ!パパに会いたい!」、それが彼女の望みでした。

彼女がついた嘘を知った母は、彼女の精神状態が更に心配になりついに精神科に3ヶ月入院させることを決意します。それからは彼女の状態も良くなり、今ではbac(バカロレア=大学入学資格試験)にも合格して、母とも関係良く暮らしています。

フランス語お役立ちフレーズ

Je pouvais plus m’en passer(=私はそれなしでは過ごせなかったの)

(02:00-02:12)
Judith : « Maman qui rentre au moment où je me réveille..le petit déjeuner c’était devenu un cérémonial. Le temps fort de ma journée, je pouvais plus m’en passer. C’était comme une bouffée d’air frais avant une journée pourrie de plus.»

私が起きるのと同時にママが帰ってくるの。朝食はもう儀式になっていたのよね。私の一日の中で一番強い時間(1日のハイライト)で、それなしでは過ごせなかったの。それはまるで、またひどい一日が始まる前の新鮮な空気を吸ったような気分だったのよ。

・se passer de 名詞/不定詞 =~(すること)なしですます、~は必要ない

・cérémonial=儀式、しきたり

・boufée=(息・風の)ひと吹き

défriser(=人の気を悪くする)

(02:56)

Judith : «Je me réveille! Je suis sûre que même les flics respectent le petit déj’. Ça te défriserais de faire pareil?»

起きてるってば!たとえ警察だって朝食を尊重するに決まってるのに。そういうふうにするのが迷惑なの?

flic…警察、ポリ公(俗語)

Ça te défriserais はArgot(俗語)で、ça te dérangerais (迷惑でしょうか)と同じ意味です。

Tout doux(=落ち着いてよ)

Maman : « Tout doux bijou. Je suis pas un flic, je suis ta mère, ok? Excuse-moi de m’inquiéter pour tes résultats scolaires.»  

ちょっと、落ち着いてよ。私は警察じゃないの、あなたのママなのよ、いい?あなたの学校の成績を心配してごめんなさいね。

・Tout doux = doucement(ゆっくりね、落ち着いて)と同じ意味です。

péter les plombs(=いらだつ、神経が昂る、キレる)

(3:33-4:02)

Maman : « Écoute. Je veux bien être une mère sympa mais y a des limites quand même, ok ? Tu pètes un peu trop les plombs toi, en ce moment, non ? » 

ねえ、聞いて。良いママになりたいけど、やっぱり限界があるのよ、いい?あなたちょっと最近すぐにキレすぎるんじゃない?

péter les plombs = s’énerver(いらだつ、神経が昂る、キレる)と同じ意味です。

plomb:鉛・弾丸、péter:爆発する

tu déconnes(=馬鹿なことを言うする、ふざける)
traîner(=目的もなくほっつき歩くこと)

(5:06-6:06)

Mélodie : « Tiens, je t’ai tout imprimé. J’espère que tu les lis au moins. Franchement être au moment du bac, autant d’absences, là vraiment tu déconnes.  Tu traînes où toute la journée ? » 

ほら、全部あなたのために印刷したよ。少なくとも読んでよね。正直に言って、バカロレア(大学入試)の大変な時期なのにこんなに欠席するなんて、本当にどうかしてるよ(ふざけてるよ)。一日中どこほっつき歩いてるの?

Judith : « C’est pas ton problème. Je viens pas te voir pour que tu me fasses la morale. T’es pas obligée de me filer les cours si tu veux pas hein. »

何があなたにとって問題なの?あなたが私に説教をするためにあなたに会いにきたわけじゃないのよ。もししたくないんだったら、私にノートを取ってくれることだって義務じゃないんだから。

・tu déconnes = めちゃくちゃを言う、めちゃくちゃにすること

・traîner = 目的もなくふらつき回ること。その場所に頻繁に行くという意味もあります。

・faire le morale…説教をする。

・filer quelque chose = 何かを与えること。写すこと。この場合は「ノートを取る」と意味になります

qu’est-ce qu’ils foutent (=[彼らは] 何をやってるんだ)
Je n’y suis pour rien (tu n’y es pour rien)(=あなたには何の非[責任]もない

(7:10-7:21)

« Mais attends, qu’est-ce qu’ils foutent dans votre lycée ? Plusieurs semaines d’absences et on m’appelle même pas ? Non, pardon Mélodie. Je sais que t’y es pour rien, toi. Merci d’avoir appelée. Merci.»

ちょっと待ってよ、彼らはあなたたちの学校で何をやってるの?何週も欠席してるのに、私に電話もして来ないの?いえ、ごめんなさいねメロディ、あなたのせいじゃない(あなたには何の責任もない)って分かってるのに。電話してくれてありがとうね。


・foutent = 動詞の「faire」の活用形「font」ですが、俗語っぽい言い方で「何やってんだ?」という少し軽蔑的なニュアンスがあります。ここでは、Judithの母が、何週間も娘が欠席をしているのに学校が電話もして来ないなんて、と少し呆れて突き放しているニュアンスがあるためです。

avoir aucune idée de(=~についてまるで検討が付かない[全くわからない]
S’y rejoindre ? (=私と合流してくれるわね?)

(8:05-8:19)

Maman : « Mélodie, c’est  Sylvie, la maman de Judith. Ecoutes, Judith est pas rentrée de la nuit. T’as aucune idée de l’endroit où elle pourrait se trouver ? Réfléchis bien. …Le jardin public près du lycée. J’arrive. Tu m’y rejoins ? »

メロディ、シルヴィよ。ジュディットの母よ。聞いて、ジュディットは夜中ずっと帰ってきてないのよ。彼女がいる場所について何の見当も付かないかしら?よく考えて。…学校の近くの公園ね、すぐ行くわ。私と合流してくれるわね?

・T’as aucune idée de=何の見当も付かないかしら

・Tu m’y rejoins =動詞「s’y rejoindre」=私と合流してくれるわね

prendre la tête(=膨れっ面をする)
balance(=密告する奴、たれこみ屋)
ne rien perdre pour attendre(=いつかきっとひどい目に合う、必ず罰を受ける)

Maman : « Et non, je ne me prends pas la tête pour rien. Il faut que tu me parles Judith. J’ai besoin de comprendre ce qui se passe là. Tu fugues, tu sèches les cours, tu te fâches avec toute tes amies, même Mélodie. »

いいえ、私は何にもないことのために膨れっ面をしているわけじゃないのよ。ジュディット、ねえ、話してちょうだい。私は何があったかを理解する必要があるの。あなたは家出をするし、授業をサボるし、あなたの友達皆んなに怒り散らすし、たとえ親友のメロディにさえも…

Judith : « Ouais alors, c’est cette sale balance. Elle perd rien pour attendre. »

ああそう、そうなんだね。あの嫌なバラし屋(メロディのこと)。いつかきっと罰を受けるよ

je ne me prends pas la tête pour rien

prendre la tête=膨れっ面をする。pour rien=何でもないことのために。

・balance = 表現方法の一種で、俗語です。秘密を皆んなにバラす人のこと、密告者、たれこみ屋と言う意味です。

Elle perd rien pour attendre(いつかきっと罰を受けるよ)

ne rien perdre pour attendre=「いつかきっとひどい目に合う、必ず罰を受ける」という慣用表現です。

M’emmerde pas avec ça=(それと一緒に)私をうんざりさせないで!

(15:12-15:35)

Maman : « Alors, comment ça se passe avec le psy’ ? Tu m’en parles jamais. »

ねえ、それで、精神科のところではどんな感じなの?あなた一度も話してくれないじゃない。

Judith : « J’ai juste pas envie d’en parler. Tu me demandes d’y aller, j’y vais mais me demande pas d’en parler. »

単に話したくないだけだよ。ママはそこに行ってって頼むだけで、私はそこに行くけど、でもそれについて話してって頼まないで!

Maman : « Oh, allez raconte. Depuis quand on a des secrets l’une pour l’autre ? »

ねえ、ほら、語ってちょうだいよ。いつから私たちはお互いに秘密を持つようになったの?

Judith : « Je t’ai dit que je voulais pas en parler, ok ? Ça t’arrange de te dire que ce psy’ libidineux m’aide? Ça te permet de mieux dormir ? Eh bien profite! Mais m’emmerde pas avec ça ! De toute façon, t’aurais pas envie d’entendre ce que j’aurais à dire ! 

私は話したくないって言ってるでしょ、いい?この淫乱な精神科は私の助けになってるよって言ったら気が済むの?それのおかげでママはよく眠れるようになるのかしら?だったらそうしたら!でもそれと一緒にして私をうんざりさせないで!どっちにしても、ママは私が言うことなんか聞きたくないでしょ!

・libidineux=淫乱な、変態の

m’emmerde pas (avec ça) =(それと一緒に)私をうんざりさせないで、うざがらせないで

m’emmerder=うんざりする、気を揉む

Je sais pas ce qui me prends=(私に)何が起きたのかわからない
C’est plus fort que moi=そうせずにはいられない(自分ではどうしようもない)

(15:52-15:58)

Judith : « Je suis désolée, je sais pas ce qui me prends. Ç’est plus fort que moi, je… »

ごめんなさい、私に何が起きたのか分からないの。そうせずにはいられないのよ…

C’est plus fort que moi = 「そうせずにはいられない、自分でもどうしようもない」という意味のフランス語表現です。とても頻繁に日常で使われます。

自分の気持ちや欲望、習慣的な行為、偏見などが自分でコントロールできないことを表します。

まとめ

今回はフランスの人気ドラマシリーズから一エピソードを取り上げ、またエピソードで実際に使われている役に立つフレーズをいくつかご紹介しました。

役者さんたちの迫真の演技に引き込まれてしまいますね。また、このように動画+聞き取り(リスニング)なら役者さんの口の動きや表情、言い方なども楽しくドラマを鑑賞しながら覚えられるため、フランス語を覚える習得方法として大変おすすめです。

今回ご紹介したドラマ以外にも、フランスには面白いドラマや映画がたくさんあります。今後もこのような役立つ表現含め、面白いコンテンツをたくさんご紹介していきます。

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この記事を書いた人

フランスへピアノの音楽留学のために渡仏し、フランス人パートナーとパリに住んでいます。可愛い雑貨やアンティーク、手芸屋さんなど可愛い物が大好き。おしゃれなカフェやおすすめレストラン探し、フランスらしい風景を写真撮影するのが趣味です。
在仏歴10年、パリガイド歴7年以上。
住んでいる人しか知らない隠れ家的スポットやおすすめ情報などをぜひご紹介していきます。

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